人間の意識は、論理的な思考・理性・決断など頭で考えている状態の顕在意識と、感情・感覚・直感・記憶・イメージなど無意識の状態の潜在意識に分けられます。
顕在意識は、私たちが日常で自覚できている意識のことですが、この顕在意識は意識全体の中のわずか1割に過ぎません。残りの9割は、潜在意識です。
氷山で例えると、顕在意識は水面に出ている極一部であり、大半を占める水面下、これが潜在意識です。
目に見えるわけではありませんが、8歳頃に、顕在意識と潜在意識を分ける膜(クリティカルファクター・判断のフィルター)が形成され、この膜ができると、日常において顕在意識が優位な状態になります。
そして、この膜が門番のような役割をすることで、外的な刺激から自分を守ることができるようになります。しかし、この膜ができる前の8歳以前は、潜在意識が優位な状態と言えます。
潜在意識には、人称の区別や善悪の区別なく、すべてを取り入れ、そして、決して忘れないという特徴があります。
つまり、膜ができる前の幼少期は、大変無防備な状態で過ごしていると言えます。そんな無防備な幼少期に、親の態度や言葉、育った環境における様々な体験、その体験から感じた感情や体の感覚、植え込まれた価値観や信念などをすべて取り込み、貯蔵していきます。
このように幼少期に取り込まれた体験や感情は、膜ができることによってフタをされてしまい外に出られなくなる、つまり、意識できなくなってしまいます。
特に、つらい体験やその体験を通して感じた感情・感覚は、常に意識できる状態だと苦しいため、潜在意識の奥深くに押し込めてしまいます。押し込めてもなくなりはしないので、本人も意識できない状態で、日常生活において、様々な影響を及ぼします。
潜在意識には時間の概念がないという特徴もあり、常に「今」としてとらえます。
例えば、過去につらい体験をし、それは、過去のことだと顕在意識では分かっていても、潜在意識では、「今」もそのつらさを感じたり、その過去のつらさがまた起こるのではないかと未来を想像して「今」不安を感じたりします。
このように、過去と似たような場面で同じような感情が湧いてくる、同じような人間関係のパターンを繰り返してしまう、制限のかかった思考や行動パターンを繰り返してしまう、先のことを考えて不安になったり、動けなくなってしまう、などの影響として「今」現れます。
そのような「今」に影響を及ぼす原因となる、潜在意識の奥に取りこまれた過去の記憶と向き合うため、顕在意識と潜在意識が繋がった催眠状態へ、セラピストの誘導により入っていきます。
そして、通常は意識的にアクセスしづらい潜在意識に直接働きかけ、現実とイメージを区別しないという潜在意識の特徴を使い、イメージの中で必要な記憶・体験・感情と向き合い、押し込めていた本音を解放したり、傷ついた感情を癒したり、必要なメッセージを受け取ったり、新たなポジティブなイメージを植え込み直していくなど、イメージの中で必要なことを行っていきます。
その中で、様々な気づきを得たり、本来の自分らしさを取り戻しながら、問題解決や自己成長、生きやすさに繋げていく、それがヒプノセラピー(催眠療法)です。